入居する店舗はどう選ぶか
店舗物件の状態による二つの選択肢
まず店舗選びでは、店づくりにおいてデザインなどの独自性を優先するか、初期費用を優先するかによって、選択肢が分かれます。独自性を求めると、内装デザインから設備・什器、装飾まで全てを自分でつくり上げる「スケルトン」物件を選ぶことになり、初期費用をかけないようにするなら「居抜き」物件を選ぶことになります。
「スケルトン」とは、前入居者の設備や内装をすべて撤去した、躯体だけの状態の物件です。簡単に言うと、箱のみで中身は全部自分でつくり上げていくものです。店舗デザインや導入設備の自由度が高い分、初期費用は高額になります。また、デザイン設計~内装工事、設備類の設置をすべて行うので、開業までの時間も長くかかります。
「居抜き」とは、前入居者が使っていた内装、設備をそのまま利用するものです。内装・設備の継承に際しては「造作譲渡料」がかかりますが、スケルトンに比べると費用は低く抑えられます。ただし、造作譲渡料は物件ごとに異なりますから、必ず確認しましょう。また、居抜き物件は既に出来上がっている分、開業までの時間も短くて済みます。その反面、店舗デザインの自由度は低く、手直しを加える場合、思った以上のコストがかかることもあります。居抜き物件を活用する場合は、前入居者が「同業種」であることと、事業規模が同程度であることが原則です。専用の設備が少ない物販の店舗だと物件の選択肢が多くなります。
階数による選択
続いて階数位置についてです。一般的な物品販売や飲食店では、前面道路から見つけやすく入りやすい「1階路面店舗」が最適です。しかし1階路面店舗は賃料が高い傾向があります。逆に同じ立地でも「2階以上」や「地階」は賃料が低く設定されます。2階以上や地階は店舗が見つけにくいので、顧客を誘引するためにはいろいろな手だてが必要ですが、工夫次第で集客が十分望めます。
2階以上の「空中店舗」の場合は、目線より上に店舗があるので気づかれにくいということが最大のデメリットです。特に階段しかない場合は、年配の人や小さな子供連れの人は上り下りに抵抗感を抱きやすいです。エレベーターがない場合は、階段などにひと工夫しましょう。「上りたくなる階段」や「上に視線が行く仕掛け」など、工夫次第で2階のデメリットも解消可能です。
「地階」も決して悪くありません。人の視線は平行から下を向いていることが多く、地階の店舗は意外と目に留まりやすいのです。人の心理でも、上るより下りる方が楽という感覚があり、地下へ行くことへの抵抗感は少なめです。建物の入口や階段上の目につきやすい場所に看板やメニューボードを置くことができれば、集客効果は上がるでしょう。もちろん地階なので窓からの景色は望めませんが、夜のみ営業の居酒屋などには適しています。ただし、地階店舗は消防などの法規制が厳しく、特にスケルトンの場合は、その対応にコストが余計にかかる場合もあるので要注意です。
インフラ・駐車場も要チェック
店舗選びでは、インフラ回りの確認はとても重要です。電気は、電源位置や配線についても自由度が高いので、ほとんどの業種で問題ありませんが、使用電力量(契約アンペア数)の確認は必要です。ガスや水道は簡単に変更できない場合が多いので、店舗設計に合っているかを慎重に確認しましょう。さらに水回りは、給水だけでなく、排水についても必ず確認しましょう。特に飲食店の場合は、衛生面に大きく関わってきますので、水の流れ具合、掃除のしやすさ、においがないかなども要チェックです。なお、排水設備には法令による定めがあるので、規定から外れないようにも注意が必要です。インフラ回りに不具合が発生すると、建物全体で見直すことになる可能性があります。改修ということになれば、営業できない期間が発生することもあるので要注意です。
自動車での来店を想定するか否かもポイントです。自動車来店を想定しているのに施設に駐車場がないと、周辺の駐車場の確保が必要です。その際は、運営経費としてかかる駐車場の賃借料を顧客から回収するか否か、回収するなら価格に上乗せするのか、などの検討が必要になります。駐車場の状況は、業種によっては集客・収益に直結する場合があるので注意しましょう。
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